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兄弟・姉妹喧嘩で手が出てしまう時の心理的な背景と親の対応方法・声かけ
記事の目次
サマリー
お子さんが2人以上いる家庭にとって「きょうだい喧嘩」は避けられない問題ではないでしょうか。大小はあるにしても、
「毎日のように喧嘩している」
「気を付けていても目を離したら喧嘩している」
と感じている親御さんは多いと思います。
特に困るのが、たたく・押す・噛むなどの「手が出てしまう喧嘩」だと思います。
怒っても諭してもおもちゃを工夫しても、日々繰り返される喧嘩に疲れてしまっている時もあると思います。
また、「どちらか一方の味方だけをすることは避けたい…」「つい下の子を助けたり譲るように上の子に言ってしまう」といったお悩みを持つこともあるのではないでしょうか。
そんな時にお子さんを理解し、寄り添い、適切なふるまいができるよう導いていくために大切なことを、この記事ではご紹介していきたいと思います。
記事の執筆者
兄弟・姉妹喧嘩で「手が出る」心理的な背景…
2歳~3歳
この時期のお子さんは嫌なことがあっても言葉で解決することがうまくできないため、行動がとっさに出てしまいます。力のコントロールも上手ではなく、強く押す、強くつかんで引っ張ってしまうなどがよく起こります。
待つことや約束を守ることなど、見通しをもって行動することもまだ難しいため、伝え方や教え方の工夫に加えて「お子さん自身の脳の成長」を待つことも大切な時期だと言えるでしょう。
→この時期の子どもたちには「気をそらす」対応も大切です。一生懸命説明したり、ダメだということを伝えてもまだ応じることはできません。
3~4歳(年少)
ルールや約束を「知っている」という状態まで成長します。ただしこの年齢ではまだ「意識して守ることができる」お子さんは少数で、「たたいちゃだめ」と知っていたとしてもいざその瞬間になると手が出てしまうことも当たり前の時期です。
自分がしたことと結果の結び付けも上手でないため「やってない」だとか「わかんない」と答えることもよくあります。(○○だったらいいな)というイメージと現実の区別もつきにくいため、事実と違うことを言ってしまう時もあります。
でもそれらは嘘をついている、知らんふりしている、人のせいにしているということではなく、わかるように示されるまでは意識できていないということなので、その状態で叱責すると脳が混乱し、強い恐怖も感じて状況はさらに悪化してしまいます。
上手に喋れるお子さんであればつい高いレベルを求めがちなこの頃こそ、年齢相応の発達に合わせた丁寧な関わりが必要です。
→この時期の子どもたちには「どうなっているか」を説明し、「それの対処方法を考えさせる(考えられない場合は教えてあげる)」ことで問題解決に導きます。
例えば
「この手が強く髪の毛を引っ張ったから抜けたみたい。抜けたら痛かったんだって。どうしよう?」
「Aちゃんの手に、引っ張ったらダメなことを教えといてくれる?」という風に伝えます。
4~5歳(年中)
少しずつルールや約束を「守る」ことができるようになる時期ですが、いざその時に「ルールを思い出させてあげる」というきっかけがまだ必要な時期です。また、自分なりの意見もしっかりと持ち始める時期なので、よく話を聞かずに問題を解決しようとするとうまくいきません。
→まず手が出てしまいそうな時に
「あ!そろそろ離れた方がいいかも!」
「あれ?叩こうとしてる?」
「約束思い出そう!」
などと声をかけ「手を出す前に思い出させてあげる」ことが大切です。
うまくがまんできた時にしっかりと褒められることで自信がつき「自分はこのストレス状態に対処できる」という感覚も育ちます。
手が出てしまった時は怒らず落ち着いて話しながら状況を整理し、
「ルール覚えてる?どうするんだっけ?」
「たたいちゃったらどうしたらいい?」
と一緒に考えてあげることで「したこと」と「その結果」を意識して「対処する方法」を教えていくことができます。
5~6歳(年長)
謝ることができるようになっても、「責任」の意味はこの時期になってもまだまだ分かっていません。そのため、すぐにケロッとしていたり同じことを繰り返してしまうこともよくあります。
一人前なことも言ったりする子どもたちのその態度に大人の方が「反省していない」とイライラしてしまうこともあるかもしれません。
→おちついて話を聞き、状況を整理して
「こうならないようにはどうするか」
「こうなってしまったらどうするか」
「お互いにどう思ったのか」
を冷静に話します。
叱責したり罪悪感を持たせたりするのではなく、この時期はあくまでまだ「対処方法」を充実させることを意識します。
情緒の成長とともに少しずつ「悪かったなという気持ち」や「本当に相手のことを考えた行動や言葉がけ」ができるようになるための素地になる大切な時期です。
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手が出てしまう時の対応方法・声かけ…
1.落ち着かせるために距離を取る
何か(自分の体や危険のないもの)差し込むと物理的に距離をあけることができ、心理的にも距離を取ることにつながります。「すとーっぷ!」などの音声も場を切り替えるのに効果的です。
2. 両者の意見を一旦おちついて聞き、共感しながら話を整理する
年中以降であれば
「では状況の整理を始めたいと思います」
「いすにお座りください」
「Aさん、なぜけんかになったのですか?」
などと会議風の雰囲気を出したりすることによって気持ちが切り替わったり、冷静になれたりすることがあります。
審判になるのではなく、整理することを意識して、フラットな態度で臨みましょう。
ここで諭したり注意したりはしない方がうまくいきますので、あくまで「冷静に状況整理(きっかけ、したこと、その結果、ルールはどうだったか確認)」と「気持ちを受け止めて共感」に集中してくださいね。
3. 一時的に気をそらす方法
下の子がまだ話し合いができないような年齢であれば上の子にテクニックを伝授することも有効です。
例えば、
「ママとAちゃんがこれで楽しそうに遊んだら、Bちゃんは絶対にこれが欲しいって来るから、その時にさっきのと交換しよう!」
というような「平和に解決できる方法」を教えてあげます。
4.こんなことも知っていてください
なんで○○したの?
「なんで○○したの?」という表現は、お子さんにとって「あなたが叩いた、それは悪いこと、しないでほしかった」というメッセージになっています。
ただ純粋に理由を聞きたい場合であってもお子さんは「怒られている」と感じてしまうため黙り込んでしまったり泣いてしまったりして話ができなくなることもあります。
意識して「何があったの?」「けんかになっちゃったの?」という表現を使うことで、お子さんは話をしやすくなります。
怒られた時のことは頭に残っていません。
お子さんが幼いほど「怒られる=強い恐怖」と捉えてしまい、感覚のシャットダウン(意識をとばす・麻痺させる)や立ち向かい行動(全力で抵抗する・逃れようとする)を起こしやすくなります。
これは動物として当たり前な反応で、「強い恐怖を感じる時=命の危機・食べられる時→痛くないように全感覚を麻痺させる、がむしゃらに対抗する」という回路が働いてしまいます。
そのため、「あんなに怒られたのに覚えていない」「真剣に伝えているのに聞かない」ということもあるかもしれませんが、幼児だからこそ「怒らずに根気よく教える」ことが大切なのです。強く怒ったら覚えられるということはなくむしろ逆なので、気をつけてくださいね。
家族が安心できる存在になっていること
社会性が育ち始めた子どもたちは家から出ると気をつかったりガマンしたりしています。
家族が安心できる存在になっているからこそ、強く自分を出したり主張したりガマンしなかったりしてしまいます。
「この子は家で安心して自分を出せている」とポジティブに考えてあげると少し心が軽くなるのではないでしょうか。
5.冷静に話せるときに家族のルールを再確認
「叩かない」という伝え方の他に
「取られたらママに言いに来る」
「叩かれてしまった時はやめて!と言ってママの所に逃げる」
などの具体的な行動を教えてあげてほしいと思います。
お子さんの脳は「○○しない」という表現を「つまり××すること」というふうにうまく処理することができません。
日常の中にルールを確認する場面を散りばめてできるだけ頭の中に残りやすくしてあげ、いざそのルールを使う時には
「あ、今!ルールを思い出してみて」
と手助けしてあげましょう。
このように関わってあげてください
*まず落ち着いて関わる*
親御さんがイライラモードだとお子さんも落ち着いて考えることができません。落ち着いて様子を見る、冷静な態度で関わることが大切です。
*頭ごなしに叱らず、お子さんの気持ちを聞きましょう*
お子さんそれぞれに言い分があると思います。「叱る」「諭す」から始まるのではなく、まずは理由や気持ちを聞いてあげることが大切です。この作業をすることでお子さんも落ち着き、問題を解決しやすくなります。
*中立・公平の立場で状況を整理し、解決を手助けしてあげる*
「いつもお兄ちゃんの意見ばっかり聞いている!」
「いつも妹ばかり守られる!」
など、お子さんはどうしても「相手がどうしてもらっているか」をよく見てしまいます。
悪いことをしたように見える方、力が強い方、など親御さんの気になるポイントで状況を見てしまう時もあるかもしれませんが、この「中立の立場」を大切にすることが、お子さんが思春期や青年期に入った時の自己肯定感や人との関わり方に影響します。
*兄弟・姉妹の関係性をはぐくむための日ごろの声かけを意識する*
普段からの良いところを認める声かけや励ましの言葉をかけてあげることで、「自分を見てくれている」「大切にされている」と意識することができます。
自分の価値を感じさせてあげることは情緒の発達に良い影響を与え、他者を尊重することにつながります。
仲良く過ごしている時や、譲ってあげるなどの関わりができた時にはしっかり褒めてあげてください。
「できている時は何も言わなくて、できなかった時だけ怒られる」
よりも、
「仲良く遊べている時に注目してほめてくれる。できていない時は整理して解決に導いてくれる」方がお子さんも嬉しいですし、親御さんもポジティブになれます。
そのような問題解決の見本を見せることで、できていない時や失敗した時に指摘したりされたりするのではなく、うまくできている時に注目してたたえ合える関係を兄弟姉妹やお友達と築いていくことにもつながります。
最後に
手が出てしまうことへの対処は一度きりではなく時間をかけてサポートしていってあげてください。
「こう教えたら1回でなくなる!」という方法は残念ながらないため、根気良く教えていってあげてくださいね。
焦らず成長を見守り、穏やかにわかりやすく関わることが兄弟姉妹のきずなを深め、健やかな成長を促します。お子さんのけんかを目の前にした時、思い出してみてください。
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こんなお子さんにおすすめ!
お役立ちコンテンツ
参考・外部リンク
イザベル・フィリオザ/アヌーク・デュボワ/土居佳代子「子どもの気持ちがわかる本 子どももママもハッピーになる子育て 1〜5歳」2019.かんき出版
https://kanki-pub.co.jp/pub/book/9784761274023/
イザベル・フィリオザ/アヌーク・デュボワ/土居佳代子「子どもの気持ちがわかる本 子どもも親もハッピーになる子育て 6〜11歳」2022.かんき出版
https://kanki-pub.co.jp/pub/book/9784761276126/