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自制心を育てる方法と発達段階:何歳から鍛える?発達障害の子どもにも有効な実行機能のトレーニング
記事の目次
サマリー
「お菓子やゲームを我慢できない」「計画を立ててもすぐにだらけてしまう」
「嫌なことがあるとすぐに癇癪を起こす」
このような子どもの行動に悩むことはありませんか?
これらの行動は、子どもの自制心に関連しています。自制心とは、自分の感情や欲求、行動をコントロールし、様々な誘惑に打ち克つ力のことです。自制心を育むことで、子どもは人生における様々な場面で自己管理ができるようになり、長期的な目標を達成しやすくなるとされています。
実際に、自制心が高い子どもは、将来次のような特徴をもっていることが大規模な調査研究で示されています。
・学業成績が高い
・ストレスに強く、適応力が高い
・自尊心が高い
・感情のコントロールができ、良好なコミュニケーションが取れる
この記事では自制心を育てる方法について解説します。発達障害の特性をもつ子どもにも有効なトレーニング方法を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
記事の執筆者
子どもの自制心は何歳頃から育つ?
自制心とは?
自制心とは、自分の感情や欲求、行動をコントロールし、様々な誘惑に打ち克つ力を指します。自制心が発揮される主な状況は以下の3つです。
①目の前の報酬を待つ力
・1つのマシュマロを今すぐ食べるか、待って2つのマシュマロをもらうか
・ゲームで遊ぶか、志望校に合格するために勉強するか
・目の前のアイスクリームを食べるか、ダイエットのために運動を続けるか
②衝動を抑える
・嫌なことがあったときに、感情を表に出さないようにする
③注意をコントロールする
・授業中に外の音が聞こえても集中する
自制心が高い子どもの特徴は?
①我慢ができる
「ゲームは30分だけ」と決めたらその通りに行動することができます。欲しいものややりたいことがあっても、順番を守ったり、「あとで」と待てる力があります。
②目標に向かって努力できる
長期的な目標や計画を立て、それに向かって行動しやすいです。そのためテスト勉強や習い事の練習にもコツコツ取り組むことができます。
③感情をコントロールできる
怒りや悲しい気持ちが強くなった時でも、自分で気持ちを落ち着けることができます。もし友達とトラブルがあっても冷静に話し合いができるでしょう。
自制心が低い子どもの特徴は?
①目の前の誘惑に負けてしまう
「お菓子は1つだけ」と言われても、ついつい2つ、3つと食べてしまったり、頭では我慢した方が良いとわかっていても欲求を抑えられないことがあります。
②気が散りやすい
何かに集中して取り組むのが苦手で、すぐに他のことに気が向いてしまいます。例えば、宿題を始めても、途中で好きな本やゲームに手を出してしまうといった特徴がみられます。
③感情的になりやすい
怒りや悲しい気持ちを、なかなか自分でコントロールできず、周りの人にぶつけてしまったり、ネガティブな気持ちを引きずってしまいます。
自制心と年齢の関係は?
4歳~5歳(幼児期後期)
この時期になると、欲しいものを少し待てるようになったり、簡単なルールを守ろうとしたりする様子が見られはじめます。
6歳~12歳(小学生)
小学校生活が始まると、集団生活の中でルールを守る重要性を学び、計画性や先の見通しを立てて我慢する力も育まれていきます。
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子どもの自制心を育てるための接し方・声かけなど
4歳~5歳(幼児期後期)
①大人が見本になる
子どもは、身近な大人の行動をよく観察しています。大人が自制心のある行動を実際に示すことで、子どももその様子を真似しながら自然に自制心を身につけていきます。
例えば、「お菓子を食べたいけれど、もうすぐ晩御飯だから今は我慢しようかな」と声に出して我慢する姿を見せます。日常生活でのこうした具体例を通じて、「我慢する」という行動の仕方を学ばせることができます。
②子どもの感情や欲求に寄り添い、言葉にする
自制心が必要になるのは、子どもが欲求や感情の葛藤を感じているときです。そのような場面では、気持ちに寄り添い、代弁してあげることで感情の整理を手助けし、コントロールする力を養うことができます。
例えば、「もっと遊びたいね。でも、家に帰ってテレビも見たいんだよね」と、子どもの気持ちを言葉で表現してあげると、欲求を整理しやすくなり、切り替えもスムーズになります。
③ルールのある遊びをする
ルールのある遊びは、自制心を養う絶好の機会です。楽しい時間の中で、待つことや指示を守る練習が積み重なり、少しずつ自制心が育まれます。
遊びの例
・だるまさんが転んだ
合図を待って動き、ストップをするときに動作を抑える力がつきます。
・ミラーゲーム
相手の動きを真似する遊びで、観察力や集中力を使って動きを合わせます。
6歳~12歳(小学生)
①一緒に小さな目標をたてる
目標を立て、それを達成する経験を積むことで、子どもは自制心や自己管理能力を養えます。目標は達成可能な範囲に設定し、達成の喜びを味わえるようにサポートすることがポイントです。
まずは、「今日はどんな目標にしようか?」とあくまでも子どもが主体的に目標を考えられるような声掛けをしましょう。
このとき設定する目標は「宿題を終わらせてからゲームをする」「漢字の練習を毎日10分続ける」など、本人が少し努力すれば達成できそうなものにします。
達成できたら「目標達成だね!がんばったね!」と子どもが達成感を得られるようにしましょう。
②感情を言葉で表現できるように促す
子どもが感情的になっているときは、まず話をじっくり聞いてあげましょう。そして、「それは腹が立ったね」「悲しかったね」と、子どもが感じていると思われる感情を言語化して伝えましょう。
こうして気持ちが言語化されることで、子どもは「自分は怒っていたんだな」「悲しい気持ちだったんだな」と冷静に自分の状態を認識できます。感情を客観視できるようになると、気持ちが高ぶっても衝動的な行動を抑えやすくなります。
発達障害(ADHD)と自制心について
発達障害のひとつであるADHD(注意欠如・多動症)の子どもは、自制心を働かせることが苦手で、衝動的な行動をとりやすかったり、気が散りやすいという特徴があります。これには、報酬系機能や実行機能という脳の働きが関係しています。
ADHDと報酬系機能
報酬系機能とは、「これをすると楽しい」「これを達成したい」と感じさせる脳の働きです。ドーパミンという神経伝達物質が分泌されることで、このような満足感や達成感を得ることができます。
ADHDの子どもは、このドーパミンが出にくかったり逆に出すぎたりするため、目の前の楽しみやご褒美に強く引き寄せられたり、達成感を得づらいことがあります。
ADHDと実行機能
実行機能とは、頭の中で「次に何をするべきか」を考え、それに向けて行動を整理したり計画したりする脳の機能のことです。ADHDの子どもは、この実行機能が弱いために、長期的な目標や、後で得られるご褒美よりも、今すぐ得られる楽しみや達成感に気を取られてしまいます。
実行機能のトレーニング
発達障害の傾向があり、自制心が働きにくい場合には、以下のような実行機能のトレーニングが有効です。
①計画や目標を「視覚化」する
計画や目標を紙に書いて壁に貼るなど、目に見える形にすることで、誘惑があってもやるべきことを思い出しやすくなります。
②遊びでワーキングメモリを鍛える
神経衰弱や数独(ナンプレ)など、記憶力を必要とする遊びは、実行機能の土台であるワーキングメモリのトレーニングに役立ちます。
③リラックス方法を身につける
感情的になって衝動的な行動に走りそうなとき、深呼吸などのリラクゼーションを行うことで、気持ちを落ち着けて冷静さを取り戻しやすくなります。
困った時はどうする?
子どもの自制心について悩み、ここで紹介した方法を試しても十分な効果が感じられない場合は、一人で抱え込まず、以下のような専門家に相談してみましょう。
自治体の相談窓口
各自治体には子育てに関する相談窓口が設置されています。無料で相談できるので、気軽に利用することができます。
学校の先生・スクールカウンセラー
学校生活をよく知る学校の先生や、スクールカウンセラーに相談することも効果的です。
医療機関・カウンセリング
発達障害の関連も含めて相談したい場合は医療機関に相談することも検討しましょう。
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こんなお子さんにおすすめ!
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参考・外部リンク
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・Pandey, A., Hale, D., Das, S., Goddings, A. L., Blakemore, S. J., & Viner, R. M. (2018). Effectiveness of universal self-regulation–based interventions in children and adolescents: A systematic review and meta-analysis. JAMA pediatrics, 172(6), 566-575.
・Florez, I. R. (2011). Developing young children’s self-regulation through everyday experiences. Young Children, 66(4), 46-51.
・Tominey, S. L., & McClelland, M. M. (2016). Red light, purple light: Findings from a randomized trial using circle time games to improve behavioral self-regulation in preschool. In Self-regulation and Early school success (pp. 135-165). Routledge.
・Sonuga-Barke, E. J. (2003). The dual pathway model of AD/HD: an elaboration of neuro-developmental characteristics. Neuroscience & biobehavioral reviews, 27(7), 593-604.