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子どもがADHD?特徴や診断方法、日々の接し方について解説します。
記事の目次
サマリー
子育てをしていて、「もしかしてADHDかも?」と感じたとき、どう対処をすればよいのでしょうか。ADHDとは不注意、多動性、衝動性を特徴とする発達障害です。
「自分の育て方が悪かったのでは」と自責の念にかられる方も多いですが、発達障害は先天的な要因が大きく、育て方は原因ではありません。ここでは子どもとのコミュニケーションがスムーズになり、子育てでの困りごとが楽になる手助けとなるよう、ADHDの特徴と日々の接し方や声掛けについて解説していきます。
また、発達障害は早期に適切な療育や治療をすることで子どものできることを増やし、可能性を広げることができます。「子どもがADHDかも?」と感じたとき、困ったときは、一人で抱え込まずに専門家に相談することも大切です。
記事の執筆者
ADHDとは?特徴は?年齢別の解説
ADHDとは?
ADHDとは、注意欠如・多動症と呼ばれる発達障害の一つです。主に以下の3つの特徴があります。
不注意
集中力が続かない。忘れ物が多い。計画性が低い。
多動性
落ち着きがない。座っていられない。動き回る。
衝動性
待つことが苦手。思いついたことをすぐに行動に移す。
このような特徴により、ADHDの子どもは学校での生活や対人関係で困難を感じやすくなります。
ADHDの有病率は?
ADHDの有病率は報告によって差はありますが、子どもで5%、大人で2.5%程度とされています。
ADHDの年齢別の特徴と困りごと
年齢別にADHDからくる困りごとについて解説します。ただし、ADHDの特徴のあわられ方には個人差がありますので、その子本人がどのようなことに困っているのかを見てあげるようにしましょう。
2歳~3歳
多動性が目立ちますが、年齢的に普通の範囲とみなされることが多いです。「静かに座っていられない」「物を投げたり泣き叫んだりする」といった困りごとが出てきます。
4歳~6歳
不注意や衝動性が顕著になり、「幼稚園や保育園でのルールを守れない」「人が遊んでいるおもちゃをとる」といったことで集団の中でトラブルになりやすくなります。
小学生
学校で集中力を維持できず、「勉強についていけない」「忘れ物をする」「宿題を忘れる」といったことが多くなります。また「授業中に勝手に話し出す」「授業中に立ち歩く」といったこともみられます。その結果、学校の先生から怒られることが増えたり、友達とのトラブルが頻発したりして学校に行きにくくなることもあります。
中学生
中学生になると、より複雑なコミュニケーションや計画性が求められます。多動性は落ち着く傾向にありますが衝動性や不注意は引き続きみられることが多いです。そのため「ケアレスミスが多い」「友達との会話で自分だけ話し過ぎる」「その場では言わない方がいいことを言ってしまう」「興味があることしか頑張れない」「計画的に物事に取り組めない」といったことが起こります。学業成績の不良や自尊感情の低さにつながります。
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ADHDやADHD疑いの子どもへの日々の接し方・声かけ
環境調整
ADHDの子どもは環境によって行動が大きく影響されます。そのため、子ども本人が生活しやすくなるように、以下のような工夫をしてみましょう。
整理整頓をする(視覚へのアプローチ)
学習や集中が必要な作業をするときは、机の上を片付けて、シンプルな環境を作りましょう。
静かな場所を準備する(聴覚へのアプローチ)
作業の途中で気が散ってしまわないように、騒音の少ない場所を選ぶようにしましょう。
わかりやすいルール作り
どんな行動がOKで、どんな行動がNGなのか、子どもと一緒に話し合ってルールを明確にしておきましょう。これによって多動性・衝動性傾向のある子どももルールを守りやすくなります。ルール作りの際には以下のことを意識するとよいでしょう。
具体的にする
「ちゃんと片付けてね」といったざっくりとした声掛けではなく、「遊んだ後はブロックを箱に入れてね」というように何をするのかを具体的にイメージできるような声掛けを意識しましょう。
見える化する
ルールやスケジュールを絵や写真で見てわかるようにしましょう。標語のようにして家の中の目につくところに貼っておくのもおすすめです。
良い行動への声掛け
子どもの良い行動を見つけて積極的にほめることで、その行動を強化しましょう。
具体的にほめる
「いい子だね」ではなく、「おもちゃを片付けてくれてありがとう」と、増やしたい良い行動について具体的にほめるようにしましょう。
スピード重視でほめる
良い行動が見られたときはすぐにほめてあげるようにしましょう。片付けができたことをほめてあげるときは、寝る前などではなく片付けができたその時すぐに、「今お片付けしてくれて嬉しいな」とほめてあげることが効果的です。
よくない行動への声掛け
道路にとびだしたり、相手をたたいたりといった行動を注意するときは、感情を抑えて冷静に対応することが大切です。
短くわかりやすく
一度に複数のことを言われると混乱してしまうことがあるので、注意したいことは一つずつ子どもに伝わっているか確認しながら話すようにしましょう。
肯定的な言い方をする
「道路に飛び出さないで」ではなく、「歩道を歩いてね」と伝えましょう。否定形の言い方だと、道路に飛び出しているイメージが頭の中で浮かんでしまい、適切な行動のイメージがわきにくくなります。
ADHDの診断基準は?
ADHDの診断基準として、アメリカ精神医学会(APA)が作成している、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)に記載されているものがよく使用されています。内容はおおよそ次のようなものです。①から④の条件を満たす場合にADHDであると診断されます。
①以下の「不注意の症状」か「多動性・衝動性の症状」のどちらかあるいは両方で、6か月以上にわたって続いていて年齢相応の発達水準に達していない項目が6つ以上あること
不注意の症状
□ケアレスミスが多い
□集中が続かない
□話を聞いていないように見える
□指示に従わず、最後までやりとげられない
□順序だてて取り組めない
□宿題など嫌なことを避ける
□物をなくす
□気が散りやすい
□もの忘れが多い
多動性・衝動性の症状
□手足をそわそわ動かしたり、椅子の座ってもじもじする
□じっと座っているべきときに座っていられない
□適切でない状況でも走り回ったり、高いところへのぼったりする
□静かに遊べない
□じっとしていられず常に動いている
□しゃべりすぎる
□質問が終わる前に答えはじめる
□順番を待てない
□他人の行為を遮ったり邪魔をしたりする
②いくつかの不注意や多動性・衝動性の症状が12歳までに現れている
③症状は2つ以上の環境(例:家庭、学校、職場、友人や親戚との関わり)で現れる
④社会的、学業的、または職業的な場面でこれらの症状により障害が生じている
実際の診察では、このような基準をもとに、普段の様子やこれまでの発育の程度から慎重に診断をしますので、1回きりの診察ではなく複数回受診して診断を受けることが一般的です。他の病態との鑑別診断なども必要になってきますので、気になる場合は自己判断せず専門家に相談しましょう。
ADHDの診断プロセスは?「子どもがADHDかも?」と思ったら
子どもがADHDかも?と思ったら、早期に専門的な支援を受けることで子どもの可能性を広げることができます。ただし、子どもが3歳~4歳までの間はADHDでなくともじっとしていられなかったり、気が散りやすかったりするものです。そのため診断ができるのは5歳ごろからとなっています。利用できる相談先には次のようなものがあります。
地域の保健センターや発達支援センター
心理士などの専門スタッフによる発達の検査や、保護者への問診があります。
医療機関を受診して診断を受けて支援を受けたほうが良いかも含めて、子どもへの接し方や対応について相談することができます。
かかりつけ医などの医療機関
ADHDの診断は医療機関で行われます。しかし、すべての病院で診断ができるわけではないため、事前にADHDの診断や治療が可能かを問い合わせるとよいでしょう。信頼できるかかりつけの病院があれば、まずそこで相談をして専門の病院へ紹介してもらうと安心です。
診断の際には、医師の問診や行動観察、必要に応じて発達に関する心理検査が行われますので、受診時にはこれまでの子どもの様子で気になっている点をまとめているとスムーズです。
ADHDの治療は?
ADHDの治療として、療育、ソーシャルスキルトレーニング、ペアレントトレーニング、薬物療法などがあります。
療育
その子どものニーズに合わせた目標設定を行い、問題解決のための対処法などを段階的に習得させることで、社会的スキルや学習スキル、協調性を育み、適応的な行動を増やしていきます。
ソーシャルスキルトレーニング
集団で他者との関わり方やコミュニケーションスキルを学ぶトレーニングです。学校生活を想定したロールプレイングなどを通して、トラブルへの対処法や感情を適切に表現しコントロールする方法を練習します。
ペアレントトレーニング
ADHDの子どもへの接し方を親が学ぶためのトレーニングです。子どもの良い行動をほめ、よくない行動は無視するといったように、強く叱るのではないやり方で子どもの適応性を高めながら子どもと良好にかかわる方法を実践します。
薬物療法
場合によっては、医師の指導のもとで薬物療法が行われることもあります。注意力や衝動性をコントロールしやすくするため薬が処方され、メチルフェニデートやアトモキセチンがよく用いられます。
ADHDは早期に適切な対処を行うことで、二次的な問題を予防し、子どもができることを増やすことができます。「子どもがADHDかも?」と感じたとき、困ったときは、一人で悩まずに専門家に相談することも大切です。
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こんなお子さんにおすすめ!
お役立ちコンテンツ
参考・外部リンク
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29033005/
高橋三郎・大野 裕(監訳)(2014).DSM-5:精神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院
https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/86264
吉益光一. (2020). 注意欠如多動性障害 (ADHD) の疫学と病態: 遺伝要因と環境要因の関係性の視点から. 日本健康医学会雑誌, 29(2), 130-141.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenkouigaku/29/2/29_130/_article/-char/ja/
進藤乃彩, & 小原愛子. (2023). ADHD (Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder) の特性に応じた支援方法開発に関する基礎研究―IN-Child Record の対応分析を中心に―. 教育経済学研究, 3, 52-67.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/roee/3/0/3_52/_article/-char/ja/
原英樹, & ハラヒデキ. (2024). ADHD-その概観と指導・治療上の課題点. 神奈川大学心理・教育研究論集, (55), 167-177.
https://kanagawa-u.repo.nii.ac.jp/records/2000431